第7回:相手に対する敬意を忘れるな!

トラブルを起こさない配慮と同時に

ダメージを最小限にとどめる努力を

 

 

クルマ遊びを長く楽しむには? カテゴリーや予算などたくさんの要素があるなかで、イチバン大事なのは『人間関係』だと考えている。モータースポーツはその性質上、相手と競い合うことが基本だ。それだけに勝った負けたと感情的になることもあれば、マシン同士の接触だって起きないワケじゃない。そうしたトラブルをできる限り起こさない、また起きたときの対策をみんなで考えてみよう。

 

①どんな状況下においても客観的な判断力を持とう

 

相手を敬ってイイ人間関係を構築する……コレって、モータースポーツに限った話じゃないんだよね。学校や職場といった社会生活、人間が生きていくうえでの基本。ところがモータースポーツは勝敗がついてまわる世界で、走行中はコミュニケーションの手段も限られる。なので誤解が生まれやすいし、感情的な対立にまで発展しやすいといえるんだ。

特にレースは抜きつ抜かれつのバトルだし、負ければやっぱり悔しいと感じるはず。コレは至極当然のこと、そもそも負けず嫌いじゃなければレースなんてやらないはず。誰もが「自分こそイチバン」と思うのは大いに結構、ただし物ごとを客観的に見て判断し、もし自分にミスがあれば素直に謝罪し、相手の速さや努力を認める気持ちがなければ、モータースポーツをやる資格はないぞ。

トラブルなく終えるのが理想とはいえ、ギリギリで競り合っていればお互いに「強引に割り込まれた」と感じることもあるし、ぶっちゃけ接触だって珍しい話じゃない。そのような事態を招かない努力が必要なのはモチロン、ある意味もっと大事なのは事後の対処だ。特にトラブルが発生した直後、そこを上手くまとめることができれば、いつまでも尾を引くことは少ないだろう。逆にいえば初動を誤ってしまうと、取り返しがつかないことになるってこと。

それと敬うべき相手は、ライバルだけじゃない。たくさんの人のおかげでモータースポーツを楽しめている事実を忘れず、主催者やサーキットのオフィシャルに対しても敬意を払って欲しい。車両の不備や走行上の行為について、彼らから何らかの注意を受けることもあるだろう。仮に自分にも言い分があっても、感情的な対応をしたらオシマイ。まずは冷静に話を聞いて反省し、そのうえで「じつは~という状況だったんです」と説明するのが筋ってモン。

オフィシャルは安全にイベントを運営するのが最優先で、別に嫌みを言うことが仕事じゃない。中~上級者になると知識や経験が増え、注意されて条件反射的に反論するドライバーもいるが、それは周囲から見ていると恥ずかしいだけ。その場でイチバン冷静かつ客観的、公正な目で判断できるのは誰? 野球などのスポーツでは審判が絶対的な力を持っており、誤審であったとしても決定が覆ることはないし、ルールを破った選手は退場させられる。モータースポーツだって「他の参加者に危険が及ぶ」と判断すれば、出走を拒否できるし失格にもなり得るのだ。

ココでは今ままで見たことのあるトラブルを例に、予防策と事後の理想的と思われる対応を挙げていく。まったくミスを犯さない完璧な人間なんていやしない。大事なのは被害を最小限にとどめること、同じ間違いを繰り返さないこと。それができればビギナーから見本とされる優良ドライバーだし、日常の生活において大いにプラスになること間違いナシ!

 

同じレースに参加しているドライバーは、ライバルである以上に仲間でもある。そう考えれば相手への敬意は自然と湧いてくるはず。

 

誰よりも速く走りたい、イチバン先にゴールしたい。熱い気持ちを持つことは大切だけど、客観的な判断力をなくさないことも大事!

 

 

直線が速い? いいえ、脱出速度が違うんです

ストレートが速すぎて勝てないよ! コレは負けた側がよく使う言いまわし。確かにその可能性もなくはない。しかし大半は手前のコーナーの脱出速度が高いだけ。当然ながらストレートの伸びも変わるよね。改造範囲が決まっているレースでは「インチキだ!」と続くことも多いけど、相手を誹謗中傷する前に自分の走りを見直すのが先だぞ。このセリフを言った時点で負けと心得るべし、自分のドラテクはパーフェクトと断言できますか?

 

 

割り込みやがって! 相手もそう思っています

コーナー進入での競り合い。レースなら多少は意地になるのも分かるが、フリー走行やタイムアタックなら、接触する危険を犯してまで頑張る必要はないよね。相手を先に行かせると同時に気持ちを落ち着け、次のラップで再アタックすればイイだけ。基本的にはイン側が優先とされているが、別にアウトから抜いちゃダメというワケじゃない。杓子定規に捉えて「オレが優先だ!」ではなく、まわりの状況を見て冷静な判断を下して欲しい。

 

 

接触後の話し合いは時間が経つほどややこしい

できれば接触ナシで終わりたいけど、やってしまったモンは仕方ない。気まずいのは誰もが一緒、まずは当事者どうしで話をするように。自分に非があるならまずは「スイマセンでした」と謝罪、状況がよく分からなければ「自分はこうだったんですが」と説明しよう。時間が経てば経つほど話しかけにくくなるし、周囲からの入れ知恵もあって面倒なことになる。その場でスッキリ話しを終わらせて、禍根を残さないようにするのがお約束。

 

 

カメラは1台だけじゃ正確な判断材料にならない

レース中に2台が接触、お互いに言い分は平行線。そんなとき証拠となり得るのが車載映像だが、当事者どうしのカメラは必ずしも正確とはいえないぞ。自分の車載映像を見て「ぶつけられた、アイツは危ない!」と騒いだ結果、両者のバトルを後方から撮影した映像が提出され、検証したら状況はまるで正反対だったことが発覚、なんてケースも実際にあった。少なくとも複数台のカメラをチェックするまでは、結論を出すのは控えるべし。

 

 

よく知らない相手と接触寸前のバトルができる?

日ごろからライバルとのコミュニケーションを取っておけ、と力説している理由がまさにコレ。相手の人柄や能力を把握しているからこそ、高いリスクを背負う接近バトルが楽しめるのだ。それに仲よくしている人に対して危険なブロックを仕掛けたり、ぶつけてまで前に出ようとは思わないでしょ? 激しいバトルを繰り広げても、走り終わったら笑顔で握手。スポーツと名前が付く以上は、誰もがスポーツマンシップを大切にして欲しい。

 

 

見えなかったではなく、見ていなかったでしょ?

接触の言い訳でイチバン多い「見えませんでした」。夢中で走るのは分かるけど、後方から近づいてくるクルマや、隣にいるクルマすら気付かないようじゃ、命がいくつあっても足りないぞ。後ろばかり見ていろとはいわないが、コーナーに入る手前では必ず周囲を見渡すクセをつけよう。またイベントによっては、写真のような全高が極端に低いクルマと一緒に走るケースもある。コレは本当に見えにくいので、混走の場合はなおさら注意!

 

 

どこに書いてあるんだよ? その言葉は恥と知れ

車検で安全タンクの隔壁の固定方法を指摘された製作ショップが、規則書に明記されていないのを理由に「書いてないんだからイイだろ」と逆ギレ。いやいや、ガムテープは誰が考えてもNGでしょう。むしろ書く必要もないレベルの話で、他のチームやスタッフも苦笑するばかり。スタッフの指示には素直に従い、その場で修復するのが厳しければ改めて相談。「どこに書いてあるんだよ?」のセリフは、アナタの評価を著しく下げるだけ。

 

 

正式な抗議じゃなければ陰口にしかなりません

負けたドライバーが「あのクルマはイカサマだ」とか、「汚いブロックをされた」と騒ぐのを聞いたことがある人もいるはず。仮にそれが事実であっても、相手がペナルティを受けていなければ単なる言いがかり。自分が正しいと信じるのであれば、主催者へ正式に抗議するように。「そこまでは……」というならば、表立ったところで不満を口にするのは控えよう。特にレースなら抗議の方法まで細かく定められていることも多いんだから。