第6回:走行前後のマシンチェックを怠るな!

 

①常に状態を把握していれば小さな変化にもすぐ気付く

 

せっかく走行会やレースに参加したのに、メンテナンス不足で満足に走れなかった。そりゃ悔やんでも悔やみ切れません、実際の整備に関しては、当然ですがプロならではの技もあります。ただし不具合がないか確認するだけなら、一般の方でもできる内容がほとんど。私が基本中の基本と考えているのは、見る・触る・締め付けるの3項目。まず目視ですが、代表的な例を挙げるならゴム類の亀裂でしょうか。普段から自分の目で確認していれば、少しの変化にも気付きやすいので、ゼヒみなさんも実践していただきたいと思います。続いては触る。メンテナンス特集で必ず取り上げられる、タイヤを揺すってハブベのガタを確認するのがまさにコレ。

最後は各部の締め付けというか増し締めです。いくら規定トルクで締めたとしても、走っているうちに緩むことが非常に多い。すべてのボルトやナットとは言いませんが、足まわりやブレーキといった大きなトラブルに繋がる部分は、毎回チェックしてもイイのでは? 隣のページでは、実際に私がチェックしている項目を部位ごとに分けて解説します!

 

 

②メンテナンス&チューニング部門

 

エンジン系

油脂類は目視でチェックしよう

パイプ抜けなども見落とすな!

 

イチバン気を付けたいのはオイル漏れ。自分だけじゃなく、他の参加者を巻き込む可能性が高いですから。シールやパッキンが劣化していれば交換、それと意外に多いのトラブルがチェック後の締め忘れ。オイルやクーラントが入っている部分のキャップは、ひとつひとつ触って確認するクセを付けるようにしましょう。触るといえば、ベルトの張り具合も調べることができますね。明らかにたるんでいるけど調整の方法が分からない、なんて場合は素直にプロの手を借りたほうが安全です。傷口を広げることになりかねませんし。

 

最低でもオイルの量と汚れはチェックして欲しいですね。あまりに減りが早いようであれば、エンジン本体がお疲れ気味と考えます。

 

ベルトの張りは、慣れていないと判断が難しいかも? 経年劣化による細かい亀裂などは、明るい場所で目視すれば分かるはずです。

 

クーラントはリザーバータンクの量、ブレーキフルードはマスターシリンダーから漏れていないかもチェックするようにしています。

 

大きなトラブルに繋がることは少ないけど、エアクリーナーの汚れも見たほうがイイでしょう。パワーダウンの原因にもなりますし。

 

ホース類はヒビ割れ、抜けをひととおり目で確認します。高い圧がかかる部分なら、ネジで締め込むタイプのバンドを使うのもアリ!

 

 

ブレーキ系

摩耗と劣化は分かりやすい

分解整備に該当するので自分で作業するのはオススメしませんが、非常に分かりやすいのがブレーキ。パッドの減りやローターの亀裂、ホースのヒビ割れなど大半は見ただけで判断できます。難しいのはリヤのドラム。カバーを外してシューの摩耗、フルード漏れを調べる程度にしたほうが無難かと思います。

パッドの減りはココで確認。あとはエンジンルームのブレーキフルード、極端に油面が下がっていればパッドの摩耗を疑いましょう。

ホースは飛び石などによる亀裂を調べます。コースアウトしたら走行時間内であっても再確認、くらいの心構えでいて欲しいですね。

ローターは単純な摩耗だけじゃなく、ヒートクラックと呼ばれる細かい亀裂もチェック。レコード盤みたいな傷があるのも要交換かな。

 

 

駆動系

ガタがある方向も診断材料

ジャッキアップした状態でタイヤを揺すって、縦方向にガタがあればハブベアリング、縦方向ならタイロッドエンドなど足まわりに異常があると判断します。駆動系は路面との摩擦抵抗が大きいほど傷みが大きいので、機械式LSDやSタイヤを使っている人は注意して下さいね。ドライブシャフトブーツの亀裂、ミッションのオイル漏れもお忘れなく。

ドライブシャフトはブーツを指で押し広げ、谷間の部分も目視しましょう。当然タイヤを回転させ、反対側まで見なきゃダメですよ。

リヤハブの状態もいつも触っていれば判断できますが、知識がないと難しいかもしれません。そんなときこそ私たちを頼って下さい!

定期点検とは少し違いますが、シフトフィールがよくないときは、リンケージブッシュを交換するとビックリするほど見違えますよ。

 

 

サスペンション

各部の増し締めをすることで、トラブルの可能性は激減する

 

足まわりで大切なのは、何といっても締め付けですね。イチバン気を付けたいのは車高調のロックシート、特に全長調整式は緩みやすいので、必ずチェックするようにしましょう。私は念には念を入れて、アーム類のボルトとナットもひととおり増し締めします。アライメントも一度プロショップで調整して終わりって人が多いけど、縁石に乗ったりするだけでズレる可能性もあるので、毎回とはいいませんが定期的に測定するのがオススメ!

いくらアライメントを細かく調整しても、付け根に遊びがあっては意味がありません。こうなったブッシュは交換しておきましょう。

ロックシートの位置をマーキングしておけば、セッティングを元に戻すのがカンタンだし、緩んでズレたときも分かりやすいです。

縁石を激しく使いまくると、タイヤがこんな状態になることも。裏側なので外してみないと気付かない部分ですよね、危ない危ない。

 

 

ボディ&室内

意外なところが緩んじゃう!?

レンタル車両で街乗りしていたら、小さな物体がフロアにコロコロと……。拾ってみたらなんとステアリングを固定している小さなボルト! 他にはシートレールとボディとの接合部や、4点式シートベルトを引っかけるアイボルトもチェック項目に入っています。走行中にステアリングが外れたり、シートが倒れたりしたらシャレになりませんからね。

ドライバーの体重を強いGと一緒に受け止める部分だし、大丈夫だろうとは思いながらも心配で、確実に締め直すようにしています。

強化マウントを入れたクルマは振動が大きくなり、それが原因でホーンボタンまわりのボルトが緩んでしまうケースがあるようです。

 

 

その他

走行中のピットインでも最低限のチェックを実行

確認はサーキットに着いてからも怠りません。走行する直前、ピットインしたとき、次の走行までのインターバル。大がかりな作業はしないまでも、タイヤの内圧チェックやホイールナットの増し締め、それとドライバーに異音や変な挙動がなかったか聞くのも我々の役目だと思っています。コースアウトしたときはレース中じゃない限り、タイヤを外しジャッキアップして破損がないか確認。こうした細かい積み重ねが、結果に繋がるんです。

 

 

サーキットという過酷なステージはメカニックにとって最高の勉強です

 

車種ごとの壊れやすい場所、スプリントと耐久による摩耗の違いなど、貴重なデータがたくさん取れました。サーキット走行は想像していた以上に過酷で、クルマの負担も街乗りとは比べものになりません。そのことを踏まえたうえで、愛車をシッカリ労ってあげて下さいね。自分でチェックすることにより、メカニックとしての目や腕も磨かれますよ!