第1回:基本の12ヶ条を頭に叩き込む!

モータースポーツに携わる心構えを再確認

中~上級者こそ初心に返ってみるべし!

アナタの行動を初心者は見本にするのだ

 

 

名前からも分かるとおり、モータースポーツはルールに則って行なわれる“スポーツ”なのだ。関わる人すべてが決まりを尊重し、遵守するからこそ安全が保たれるってワケ。今回からスタートするこのコーナーでは、今後のモータースポーツ業界を担うビギナー、また彼らの手本になるであろう中~上級者に向けて、社会生活でも役立つルールとマナーを少し辛口で、また分かりやすく教えていくぞ!

 

どんな趣味であろうと、盛り上がれば盛り上がるほどある問題が浮き上がる。それはマナーとモラルの低下であり、そのカテゴリーを衰退させる原因になるケースも多い。クルマ遊びも同様で、20~30年ほど前は決して一般的じゃなく取り締まりも厳しかったチューニングが、規制緩和を契機として誰もが楽しめるようになり、エスカレートしすぎた一部の人たちのせいで、新しくより厳格な規制が作られるようになった。モータースポーツに関していえば、以前は『サーキット=公式レースをするための場所』だった。それが一般に開放され、誰もが安全な場所で走れるようになったのは、非常に素晴らしいことであるのは間違いない。しかし一方で、サーキット特有のルールやマナーを理解しないまま参加する人が多くなり、トラブルが増えているのもまた厳然たる事実なのだ。

特にモータースポーツは、他のスポーツに比べて危険度が高いといわざるを得ない。だからこそ参加者だけじゃなく、イベントの主催者やクルマを作るプロショップも含め、関わる人すべてがルールやマナーを認識する必要がある。もちろん、イベントやサーキットごとに独自の決まりもあるが、ココで教えていくのはモータースポーツ全体に通用するばかりか、仕事や学校といった社会生活にも役立つことが多いので、場慣れしてきた自覚のある中~上級者にこそ熟読して欲しい。「モータースポーツを経験することで人間的にも成長する」とは、誰の言葉か不明だがじつに本質を突いている。今回は基本の12条を列挙。ひとつひとつの項目を、実例などを交えつつ詳しく解説します。

 

 

①理解する!

参加者が絶対の守るべきモノ、それはイベントの規則だ。車両の改造範囲や安全装備はモチロン、中~上級者であればコンセプトも含めてイベントの”空気“を壊さないよう配慮すべき。ビギナーを対象としたイベントに経験豊富なドライバーが出て、「どうだ! オレって凄いだろう!?」なんてのは、端から見ればカッコ悪いことこの上ない。どんなイベントにも必ず規則書はあるはずなので、エントリーする前にシッカリ目を通しておこう。

 

②よく聞く!

イベントでは走行前にブリーフィングが行なわれる。何度も参加しているから聞かなくても大丈夫、なんて慢心せず必ず出席するように。その回から変更されたルールがあるかもしれないし、路面状況や他に参加している人も顔ぶれも分かる。居眠りしているなんてのは論外、分からないことがあれば恥ずかしがらずに質問するべし。主催者だって自分のイベントで事故やトラブルは起こしたくないので、理解できるまで丁寧に教えてくれる。

 

③確認する!

サーキット走行とは、自分が思っている以上にクルマへの負担が大きい。街乗りでは何も問題なかろうと、負荷がかかった結果トラブルを起こすケースも多いのだ。クルマに詳しくない人でも、タイヤとブレーキの残量やエンジンオイルとクーラントの量と汚れくらいはチェックできる。また走行前にはタイヤの空気圧やハブボルトの締め付けトルクも確認。自分がクラッシュするだけならまだしも、他の参加者を巻き込んだりしたら大惨事!

 

④身を守る!

いくらエスケープゾーンの広いサーキットといえども、スピードが乗っていればクラッシュ時のダメージは大きい。ドライバーもクルマも安全装備に関しては、可能な限りの対策をしておくのが常識だ。相手と競り合うことで危険度も高くなるレースなら、ロールケージと4点式シートベルトは必須。そこまでの予算がない、また装着したくないのであれば、それらが必要ない絶対的なスピードの低いカテゴリーに参加すればイイだけのこと。

 

⑤遵守する!

規則は理解するだけじゃなく、シッカリと守ること。特にレースなど順位がつくイベントでは、レギュレーションを遵守したうえでの勝利じゃなければ何の価値もない。違反などをチェックし、発覚すればペナルティが与えられるイベントは決して多くないが、だからこそ参加者ひとりひとりのモラルが重要になるワケだ。またサーキットによっては、音量などが厳しく決められている場合があるので、初めて走るときは事前に確認しておく。

 

⑥気を配る!

運転を見れば人となりが分かる。周囲を見ずに突っ走るタイプ、逆に遠慮しすぎて実力を発揮できないタイプ……。それらの欠点はモータースポーツ、特にレースをやることで間違いなく矯正できるぞ。何台も連なったバトルの最中でもまわりのクルマに配慮し、かつ自分のポジションをひとつでも上げる。まさに社会生活そのもの。熱くならなきゃレースじゃない、でも客観的にまわりを見渡す冷静さも持ち合わせるドライバーを目指そう。

 

⑦自制する!

自分の行動は常に誰かに見られている、という自覚を持って欲しい。特に中~上級者はビギナーにとっての目標になることが多いので、走行中はもちろんパドックやサーキット外での行為にも気を付けるべし。また近年はモータースポーツに限らず、インターネット上の問題発言で身を滅ぼす人が後を絶たない。文字しか見えないインターネットでは真意が正確に伝わりにくいし、マイナス方向に増幅されて受け止められるケースも多いのだ。

 

⑧満喫する!

モータースポーツは基本的に勝ち負けの世界。だからこそ勝利にこだわる気持ちも理解できるし、そういった向上心をなくしたらダメだと思う。だけど、プロじゃない限りモータースポーツは身銭を切って楽しむ趣味であるはず。まずは参加して無事に走り切ったことを喜び、順位がよかったら喜ぶ要素が増えた、程度に考えてもらいたい。中級に足がかかったくらいの人は、特に間違った勝利至上主義に陥る傾向があるので注意して欲しい。

 

⑨尊敬する!

熾烈なバトルを繰り広げるライバルは、逆に考えれば自分を燃えさせてくれる最高の仲間。だからこそ相手を押し出すような走りは絶対にNGだし、ドライビングミスで接触したらミラー越しに手を挙げるなど、どんなカタチでも構わないから意思表示すること。そして走り終えたら、勝った負けたに関係なく「ありがとうございました!」と健闘を讃えあう。負けたからといって目も合わせずピットに帰っていく、なんてのは話にならない。

 

⑩学習する!

今をときめくプロドライバーだって、初めからメチャメチャ速かったワケじゃない。誰もが長い時間をかけ、周囲の力を借りて少しずつ成長してきたんだ。タイムが伸び悩んだり、セッティングが行き詰まったりしたときは、プロショップに助言を求めたり、ノーマルの状態にリセットすることも必要。失敗しても「コレはやっちゃダメ!」というデータのひとつと考え、次に活かせばイイ。そうした少しずつの積み重ねが自分の財産になる。

 

⑪感謝する!

モータースポーツはドライバーの個人競技と感じるかもしれないが、じつはコレ以上ないほどのチームスポーツだ。クルマを作ってくれるプロショップ、現場で手伝ってくれる仲間、応援してくれる家族……。また楽しく走れる機会を作ったサーキットやイベント主催者まで、自分を取り巻くすべてに感謝することを忘れて欲しくない。この気持ちはモータースポーツに限らず、いち社会人として生きていく上で欠かせないことだと思わない?

 

⑫こだわる!

愛車をレーシングカーのようにカラーリングする、憧れのドライバーと同じワッペンを貼り付ける、仲間で統一したチームウェアを作る。せっかくモータースポーツという華やかな世界に身を置くんだから、クルマや自分自身をカッコよくすることも追求すれば、楽しさが倍増するに違いない。走りがおろそかになっては本末転倒だけど、見た目やスタイルへのコダワリを持つようになることが、ビギナーと中~上級者のボーダーラインかも。